超電導物性・NMR分光グループ

研究背景

■ 銅酸化物高温超伝導の謎解き

1986年に層状ペロブスカイト系銅酸化物において高温超伝導が発見され、室温で超伝導を 示す夢の材料を目指して、研究は盛んに行われてきましたが、この銅酸化物でなぜこのような高温で超伝導が起こっているのかなど、多くの謎が解明されていません。銅酸化物の典型 とされて盛んに研究されてきた(単層系)銅酸化物高温超伝導体 La2-xSrxCuO4 の相図の全容を説明できる理論はありません。

我々のグループでは、単位砲に3枚以上のCuO2面を含む多層型銅酸化物において核磁気 共鳴を用いた研究を行い、乱れのないCuO2面における反強磁性-超伝導相図を研究しています。そこでは驚くべきことに、「反強磁性体」が電荷ドーピングによって両者の共存領域を経て 「超伝導」へと連続的に変化していく相図が明らかになってきました。この結果は、従来の(単層系)銅酸化物高温超伝導La2-xSrxCuO4の相図とは大きく異なります。 化学的置換により キャリアをドープする高温超伝導の宿命とも言える「結晶の乱れ」の問題と、強い2次元性に伴う反強磁性の不安定性が、 La2-xSrxCuO4の相図の理解を困難にしていたのだろうという のが、我々の見解です。

この「乱れ」のほとんどない多層型で作った相図は、銅酸化物での高温超伝導と反強磁性の 親密な関係を強く示唆しており、超伝導転移温度がこれまでのものより極めて高くなっている理由も、「磁性」が絡んだ「強相関効果」に起因するものであると考えることができます。 「磁性」と「超伝導」の連携・協奏の観点から、強相関電子系の超伝導体全般の統一的な理解に向けて研究を進めています。

多層型銅酸化物を用いた、乱れのない理想的な銅酸素面の新しい電子相図の発見 (2012)