研究手法/装置
■ 核磁気共鳴法(NMR、"Nuclear Magnetic Resonance")とは…
物質はたくさんの原子から構成され、多くの原子はそれぞれ固有の核スピンを持っています。 核磁気共鳴法(NMR、“Nuclear Magnetic Resonance”)は、その核スピンの電磁波共鳴吸収現象を利用して物質の電子系の性質を明らかにする実験手段の一つで、私たちは主にこの方法 を用いて研究を行っています。
外部磁場中で原子核の核スピンはゼーマン分裂を起こしますが、そのエネルギー分裂と等しい高周波磁場を印可してその共鳴現象を観測する核磁気共鳴(NMR)は、物理、化学、生物、医学といったほとんどすべての自然科学の分野で、ミクロな世界の精密なデータを提供する非常に重要な実験手段となっています。
NMRは、現在においてはその原理と基礎的な実験技術が確立され、原子、分子、液体および 固体の様々な研究に応用されています。
例えば最近の医療の分野で、これまでのX 線診断に代わるMRI(Magnetic Resonance Imaging)は、まさに人体の主要な構成元素である水素のNMRを利用した医療診断装置であり、NMR技術の顕著な応用例のひとつとなっています。
固体物性の研究においては、NMRから得られる情報は、各原子核位置での局所的な磁化率であり、その大きな特徴は、物質内の内部磁場といった静的な情報だけではなく、緩和現象の測定を通じて、電子や電子の担う磁気モーメントの運動といった動的な情報を同時に得られるところにあります。
特に超伝導や磁性を対象とした研究では、超伝導対の対称性やギャップの異方性の決定、また磁気秩序の有無や磁気構造の同定などに大いに威力を発揮しており、物質をミクロな立場から理解できるという意味において、その物性研究に欠くことができない実験手段となっています