超電導物性・NMR分光グループ

お知らせ

【お知らせ】本研究室で一緒に研究する仲間、卒研配属および大学院進学希望の学生さんを募集しています。また中高校生を対象にした講義などアウトリーチ活動も随時行っております。 高校中学の先生方でご興味があればご連絡ください。

ようこそ 超伝導物性・NMR分光グループ 椋田(むくだ)研究室へ

高温超伝導物質の起源、様々な新しい超伝導物質の電子状態および超伝導発現機構の解明、電子の持つ「スピン」「電荷」「軌道」の多面性が絡んだ新しい量子物質相の探索、およびそれらに伴う新奇な磁気および伝導現象など、原子スケールの視点の実験から探索・解明します。

実験手法として、主に「核磁気共鳴(NMR=Nuclear Magnetic Resonance)法」を用います。この手法は、物質中の特定原子を選択した原子核磁気モーメントと、物性を支配する電子の磁気モーメントの相互作用を通じて、物質内の電子状態をミクロスコピックな視点からアプローチできる独特の実験手法であり、現在物性物理学で欠かせない測定手法の一つとなっています。 極低温・強磁場・高圧などの複合極限を組み合わせたNMRの物性研究手法の可能性を追究して、未来を創る新しい物質の新機能を開拓していきます。

研究室の目標は、

  • 超伝導機構の解明実験を通じて我々が発見した指針に基づき、どこかで室温超伝導が発見されること
  • 熱電材料の性能の起源解明実験を通じて発見した指針に基づき、世界一の熱電材料が開発されること
です。

さらに興味をもってくださった皆様へ.....もう少し踏み込んだ話

1911年にオネスによって発見された超伝導現象は、100年を越えてなお研究者の興味がつきない物性物理学の華です。

発見から長らく超伝導は10K程度の極低温でしか起きない現象と思われていましたが、1986年に転移温度が153Kにも達する銅酸化物高温超伝導(1986-)が発見されました。以後、新しいタイプの超伝導体が次々と発見されてきましたが、この記録はなかなか破られませんでした。2015年に、地球内部の圧力に相当する超高圧下の水素化物で200Kを越える超伝導が報告されました。もうすぐ室温でも?とも思われる発見ですが、応用上は我々の住む大気圧下で起こる超伝導体が必要です。まだまだ室温超伝導への道のりは険しいのですが、かつての人類の夢は近づいてきています。

■ 超伝導はなぜ起こるのか?

超伝導が起こっていることは、電気抵抗ゼロやマイスナー効果が観測されるなどで知ることができます。しかし、なぜ?についてはすぐに答えが出るものではありません。様々な実験手法による実験や理論計算など多角的な研究から解明され確立されていくことになります。

超伝導メカニズムに関して、通常金属で起こる超伝導を格子振動(フォノン)を媒介とした対形成で説明したBCS理論(1957)が、現在唯一認められた超伝導理論です。当時、通常金属で起こる超伝導で起こるさまざまな現象をものの見事に説明しました。人類はオネスによる超伝導発見からその現象の理解にたどり着くまでに46年を要したことになります。

しかし、近年発見されてきた重い電子系超伝導(1979-)、銅酸化物高温超伝導(1986-)などでは、BCS理論の枠内での説明は難しく、スピンによる磁気的な対形成機構など新しい超伝導機構が議論されています。万人が納得するに至ってないという意味でまだ完全に理解されていません。電子相関(電子が互いに避け合う作用)が非常に強い状況でこれらの超伝導が起こるため、とても様々な複雑な現象を伴って観測され、本質を抽出することが極めて難しいことが実験検証を困難にしている要因の一つです。

しかしながら広い意味で見れば、超伝導の電子対形成のメカニズムの豊かな多様性が認識されてきたとも言うことができます。つまり、超伝導を探索する物質系のルートも多様にあるということ、さらには、より強い引力機構で超伝導が発現すれば、より高い転移温度をもつことも期待されます。

我々は未解明の超伝導物質の機構を解明すること、フォノン以外の根本的に全く新しい超伝導機構を見出すことを目標に、核磁気共鳴(NMR)実験を用いてミクロな視点から研究を推進してきました。特に、近年続々と発見されてきた新奇超伝導物質に対して、超伝導特性や背景の発現機構に関わる電子状態などの研究を展開し、新奇な超伝導機構の解明への道筋となる研究成果を発信しています。その間、必要に応じて「高圧・磁場・極低温」という多角的な技術の組み合わせを必要とする実験条件下でのNMR装置を開発しながら、幅広い実験条件下で起こる様々なタイプの超伝導の性質を研究しています。

BCS理論のフォノンに次ぐ第2、第3の超伝導機構を実証できたら、100年の歴史をもつ超伝導の基礎研究において、超伝導機構の多様性の基礎的理解が深まるだけでなく、将来の新しい室温超伝導発見への道筋が見つかるかもしれません。高い転移温度をもつ超伝導物質がなぜ高いのか、また今の候補物質の転移温度は低くとも新しい機構であれば将来性があって面白い、このような視点での研究も行っています。

研究室の目標は、超伝導機構の解明実験を通じて我々が発見した指針に基づき、世界のどこかで室温超伝導が発見されることです。

最近、熱電材料の熱電性能向上因子を探す実験も始めました。その実験を通じて発見した指針に基づき、世界一の熱電材料が開発されることも新しい目標となっています。

この夢に共感してくれた学生の皆さん、いっしょに研究をしませんか?